建築設計
支援学校 仙台みらい高等学園宮城県
宮城県が令和元年に青葉山にある旧宮城県教育研修センターの跡地利用計画を民間の事業者に公募し実現したプロジェクトである。新たに特別支援学校としてよみがえらせた。本校舎(大規模な模様替え/用途変更)、寄宿舎(新築)、体育館(新築)、2つの実習棟(既存改修)の5棟と付属建物を整備した。
初めて現地を訪れた時、昭和44年に建設された旧研修センターは山中の荒れ放題の樹木に囲まれて廃墟となっていた。調査のため薄暗い屋内に足を踏み入れると人の住まなくなった建物のすえた匂いが鼻をつき、壁には無数の亀裂が入っていて東日本大震災の爪痕が痛ましく残されていた。
それでも山の空気は澄んですがすがしく、遠くから山羊の鳴き声が聞こえ合唱するようにニワトリも高らかに歌い出す。大自然の素晴らしい恵みの中で、夜には満天の星空が広がるのだろうなあ、子供達の笑い声が聞こえたらいいなあ…。想像するうちに私の中で少しずつ新しい学校の構想が芽生えてきた。
学園生活を送る施設を整えるのはやさしくはなかった。
1万8千平方メートルを超える広大な土地は山林に覆われており、整地と旧建物の解体が必要だった。
またこの敷地は宮城教育大学の奥まった位置にあり基準法上の道路に接していないため大学と連担の敷地として一団地の認定許可を受ける必要があり申請関係は困難を極めた。
この学校では軽度の知的障害の子供たちに一般科目の他、技能を身につけることを目的としている。
将来パティシエや美容系、福祉、農業関連の職業に従事できる技術を体得するための各実習室を備えた。
ランドスケープとして通路、広場、駐車場、植栽、圃場を整えた。
敷地段差には大きな円弧を描く緩やかなスロープを設置し中央に円形の花の広場を造って学園のシンボルとした。
生徒たちが自ら植えた色とりどりの花々がここを訪れるひとを優しく迎え入れる。